今回は東京都、神奈川県の各校の入試状況を分析していきます。男女ともに最難関校の動向に大きな変化がなかった一方で、中堅校の出願者数の伸びが目立ったのが特徴です。
まずは都内の男子ですが、表のように開成は微増、麻布は微減、武蔵は微増、駒場東邦は微増と最難関校の出願状況はほぼ昨年度並みでした。慶應普通部は減少、早稲田①、早大学院は増加、早実は微減ですので、早慶の出願者数も全体としてはほぼ昨年度並みです。増加が目立つのは攻玉社①です。
攻玉社は2025年度の東京大学合格者数が前年度の9名から18名へと大きく増加しました。また2月5日実施の特別選抜を従来の算数1科目だけではなく、算数・国語の2科目選択を可能にしました。算数が標準的な問題と発展的な問題の2種類でしたが、特に後者の難易度が非常に高かったので算数が得意でない受験生にとっては厳しい入試でした。もともと面倒見の良い進学校であり、大学進学実績もよく、入試改革によって受験しやすさを伝えることができたのが増加の要因と思われます。
2月2日は昨年度2月3日に入試日を移動した青山学院が元に戻ったため、特に大学附属校に影響を与えたと思います。2月2日の攻玉社②も大きく出願者数を増加させました。本郷は最近の難化に伴い2月1日は出願者数を減らしましたが、2日は出願者数を増やしました。本郷も大学進学実績が堅調ですので今後とも難化が予想されます。
2月3日は東京都市大付属③が572名⇒734名と大きく出願者数を増加したことが注目されます。東京都市大付属は2月1日の午後入試について、従来は算数と国語の2教科でしたが、本年度は算数と国語の2教科、もしくは算数と理科の2教科の選択を可能にしました。また昨年度まではⅡ類とⅠ類の学力別コース編成をとっていましたが、このコース制も廃止しました。この改革が評価され、他の回でも出願者数が増加したと思われます。2月1日の午後入試でも東京都市大付属が大きく増加しました。
男子校では暁星①が222名⇒251名、暁星②が220名⇒276名と増加しました。東大に6名が現役合格し、医学部合格も84名と実績を伸ばしています。英語だけではなく仏語も学習可能であり、面倒見の良さが評価されたと思われます。
一方、女子校は2月1日が日曜日で宗教上の理由で女子学院などが2月1日から2日に入試日を移動する「サンデーショック」の年でした。その影響が非常に大きかったと思われます。2月1日のまま入試を実施した難関校と2月1日から2日に入試日を移動した難関校が出願者数を大きく伸ばしました。一方で、もともと2月2日に入試を実施している学校は出願者数を減らしています。
その中で注目されるのは頌栄女子学院です。従来実施していた一般入試での面接を廃止して受験生の負担を減らしました。2月の帰国生入試も廃止し、英語資格によるみなし得点と算数・国語の点数で合否を決める英語利用入試を新設しました。この入試は4科目入試と併願が可能です。帰国生入試の受験資格はないが英語力に自信のある海外生活経験者、インターナショナルスクールなどに在籍している児童、幼少期から英語を学習し、英語の検定資格を保持している児童にはチャンスが広がった格好です。
山脇学園は、出願者総数が2024年2809名⇒2025年2836名⇒2026年3310名と増加しています。元々帰国生を積極的に受け入れ、英語教育には定評がありましたが、SSH指定校になり、理系教育にもかなり力を入れています。富士見丘学園は出願者総数が2024年705名⇒2025年883名⇒2026年1123名と増加しています。英語に力を入れ、様々な高大連携を通して、大学進学実績を伸ばしている点が評価されています。神奈川学園は出願者総数が2024年695名⇒2025年1007名⇒2026年1128名と増加しています。授業を週5日制、二期制を採用し、土曜日を部活動、特別講座、自学自習の時間にあて、理科実験を多数実施するなど理系を強化したことが評価されたと思われます。このように最近はグローバル教育や理数教育に力を入れる女子校が評価されています。
共学校では文教大学付属は、出願者総数が2024年1422名⇒2025年1894名⇒2026年2755名と増加しています。昨春、高校から設定されるアルティメットクラスの1期生が卒業し、大学合格実績が伸長しています。系列に文教大学があることも安心感を与えています。学習塾と連携した放課後自立学習支援スペース「文教ステーション」もあり、学校でしっかり面倒を見ていることも評価されています。千代田は、出願者総数が2024年351名⇒2025年720名⇒2026年1035名と増加しています。研究コースと開発コースに分けて、最先端の学びに触れたり、様々なラボで研究したりする探究プログラムが高い評価を受けたと思われます。共学校で出願者数が増えた学校はまだまだあります。大学進学実績を伸ばした学校、面倒見が良く学校だけで学びが完結する学校、魅力的なグローバル教育や探究プログラムを提供した学校が出願者数を伸ばしています。
さてここまで今春の状況を簡単に紹介しましたが、男女ともいわゆる最難関校への願者数の集中傾向はありません。むしろ中堅校の増加が目立つのが昨今の入試です。高校授業料の実質的な無償化の影響により、従来高校募集が中心であった学校においても中学からの受験が増加しています。また、校名変更、共学化、有名大学の系属校化などを契機に、一気に難化する学校も毎年みられます。その一方で、ほとんどの私学では建学の精神を引き継ぎ、各校が個性的な教育を継続しています。先生方や在籍する生徒の雰囲気はそれぞれ特徴があります。出願者数などの数値に表れる部分以外にもぜひ注目していただければと思います。
広野 雅明( ひろの・まさあき )
サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。