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2025年度の中学受験も昨年の11月頃から始まる帰国生入試、12月1日から始まる千葉県の第1志望入試を皮切りにスタートしました。1月10日から始まる埼玉県入試、1月20日から始まる千葉県入試、12月から1月にかけて東京都内や神奈川県内で実施される地方校の首都圏入試、そして2月1日からは東京都、神奈川県でも私立中学校受験が解禁されます。東京都や神奈川県では午後に入試を実施する学校が増加していますので、2月以後は多くの受験生が午前と午後に受験します。

近年では受験生1名あたりでのべ8校強の学校に出願されます。お住いの場所にもよりますが、まずは1月10日頃に実施される埼玉県の学校、1月20日頃に実施される学校、そして2月1日以後に東京都や神奈川県の学校を受験される方が多くなっています。千葉県や埼玉県の学校も湘南新宿ライン、上野東京ライン、副都心線の開業で都内や神奈川県からも受験しやすくなりました。そのため以前に比べて通学範囲が拡大されているのが近年の特徴です。

さて今回はまずは1月校の状況をみていきましょう。

年々過熱する埼玉入試

昨年度開校した開智所沢中等教育学校が初年度に約8000名の志願者を集め注目を集めました。開智中学校と共通の問題で両校同時に受験できるメリットやグローバル時代に相ふさわしい教育理念、そして新設校への期待が大きかったと思われます。本年度はさらに志願者を増やし約16000名になりました。次年度からは医進、国際、探究のクラスが設置されますので、ますます期待されています。開智中学校も昨年度は同じく約8000名の志願者を集めましたが、本年度は、約15000名の志願者数となりました。昨年度、新設された創発クラスや生徒自身が選べる4つのコース制などが支持を集めた理由と思われます。本年度も両校は共通の試験で同時に受験可能、受験料20,000円で系列校のすべての回の受験が可能であることも受験生には大きなメリットになっています。

次に栄東中学校は、昨年度まではA日程が、1月10日と11日にいずれか1日のみに受験できる分割入試になっていましたが、本年度からは10日が東大選抜クラスの合格も出すA日程(東大)、11日が難関大クラスの合格だけを出すA日程(難関大)となり、両日程の併願が可能になりました。最近では毎年東京大学に10名以上合格者を出し、他の難関大学にも多数の合格者を出し、進学実績も良好です。出願者総数は昨年度の約14,000名から本年度は14,400名に増加しました。栄東は受験料が2回までは25,000円、3回以上が35,000円と受験回数により、費用が異なりますので、単純に開智学園との出願者数の比較はできませんが、どちらも多数の受験生を集めたことに変わりはありません。

昨年度、「医進コース」を設置し、1月11日の午後に算数・理科の2科目での入試を新設した淑徳与野中学校は本年度も大人気でした。医進コース特別入試は1月10日の午後に変更し、志願者が525名から685名に増加しました。1月13日の第1回入試も1793名から2128名に増加しています。女子の理系志向の増加で医歯薬系を目指す方の期待を集めています。

他の埼玉県の学校の出願者数を一部紹介すると、浦和明の星女子は第1回が1980名から1919名へと微減、大宮開成では第1回が2359名から2060名に減少、立教新座は第1回が1744名から1710名に減少、埼玉栄は第1回が1940名から1801名に減少、獨協埼玉は第1回が1138名から1105名に減少、浦和実業は第1回午前が484名から527名に増加しています。

受験日 受験校略名 募集回数名 2025年 2024年 2023年 昨年比
2025/1/10 栄東 A日程(東大) 5179 5597 5163 92.5%
2025/1/10 開智 1回 4059 2525 1636 160.8%
2025/1/10 開智所沢 1回 4114 2309 178.8%
2025/1/10 大宮開成 1回 2060 2359 2112 87.3%
2025/1/10 淑徳与野 医進コース特別 685 525 130.5%
2025/1/10 埼玉栄 1回 1801 1940 1710 92.8%
2025/1/10 埼玉栄 2回 1330 1556 1231 85.5%
2025/1/10 開智未来 第1回 307 288 276 106.6%
2025/1/11 栄東 A日程(難関大) 3882 2421 2706 160.3%
2025/1/11 開智所沢 特待A 2535 910 278.6%
2025/1/11 開智所沢 算数特待 2417 882 274.0%
2025/1/11 開智 創発クラス(特待A) 2320 931 434 249.2%
2025/1/11 開智 算数特待 2218 840 410 264.0%
2025/1/11 獨協埼玉 1回 1105 1138 1335 97.1%
2025/1/11 埼玉栄 3回 813 805 640 101.1%
2025/1/11 埼玉栄 4回 727 610 507 119.2%
2025/1/11 城北埼玉 2回 305 380 391 80.3%
2025/1/11 開智未来 算数1科 154 150 127 102.7%
2025/1/12 栄東 東大Ⅰ(特待) 1281 1497 1599 85.6%
2025/1/12 開智所沢 2回 3690 2033 182.5%
2025/1/12 開智 2回 3521 1974 1141 178.4%
2025/1/12 大宮開成 特待生選抜 943 1131 1029 83.4%
2025/1/12 獨協埼玉 2回 617 657 689 93.9%
2025/1/13 淑徳与野 1回 2128 1793 1771 118.7%
2025/1/13 埼玉栄 5回 555 518 496 107.2%
2025/1/14 浦和明の星 1回 1919 1980 1987 96.9%
2025/1/14 大宮開成 2回 1120 1388 1350 80.7%
2025/1/14 開智未来 第2回 220 184 164 119.6%
2025/1/15 開智所沢 特待B 3170 1385 228.9%
2025/1/15 開智 特待B 2952 1391 963 212.2%
2025/1/16 栄東 B日程(難関大) 3097 3500 3325 88.5%
2025/1/17 獨協埼玉 3回 598 622 692 96.1%
2025/1/18 栄東 東大Ⅱ 961 980 978 98.1%
2025/1/20 市川 1回 2658 2673 2742 99.4%
2025/1/20 専修大松戸 1回 1427 1466 1563 97.3%
2025/1/20 昭和秀英 午後特別 792 690 632 114.8%
2025/1/21 東邦大東邦 前期 2333 2276 2266 102.5%
2025/1/21 国府台女子 1回 1039 1060 856 98.0%
2025/1/22 渋谷幕張 1次 1957 2059 1987 95.0%
2025/1/22 昭和秀英 1回 1467 1357 1323 108.1%
2025/1/23 芝浦工大柏 1回 1217 1163 1139 104.6%
2025/1/25 立教新座 1回 1710 1744 1760 98.1%

第1志望の受験生増加が目立つ千葉入試

渋谷幕張は、東京大学合格者数では千葉県では1位、日本全国でも5位以内入り、共学校ではトップになる進学校です。大学進学だけではなく、自調自考の校訓の元、自由な精神で自立している人材を世に輩出していることと、早くから帰国生を受け入れ、グローバル教育を充実させてきたことの評価が高いです。本年度の一次試験の志願者数は、昨年度の2059名から本年では1957名とやや減少しました、そして実受験者数も1969名から1873名に減少しましたが、合格者数を665名から736名に増やしています。そのため本年度は合格しやすくなっています。

一方で2024年に東京大学に31名合格させるなど進学実績が上昇している市川は本年度の第1回が2673名から2658名とやや減少していますが、こちらも受験者の学力レベルは上昇しています。市川も進学実績だけではなく図書館を核とした「第三教育」、スーパーサイエンスハイスクールの取り組み、土曜講座や市川アカデメイアなど学校独自の時代に合わせた独自の教育が保護者に期待されています。
医学部もある東邦大学の付属校である東邦大東邦は前期試験が2276名から2333名に増加しています。東邦大学は、医学部、薬学部、理学部、看護学部、健康科学部をもつ自然科学系の総合大学ですが、東邦大東邦の生徒の多くは、他大学を目指す進学校です。東邦大学のリソースを各種の高大連携の取り組みで活用できますので、理系を目指す生徒にとってはメリットが大きいと思われます。

面倒見のよい進学校として知られる昭和学院秀英は午後特別入学試験が690名から792名、第1回が1357名から1467名と増加しています。昭和秀英はスクールミッションとして「生徒の自己実現を支える教育」を掲げ、「自律した自己」「他者の尊重」の意識と「学力・教養」を身につけさせ、さらに生徒自らが「学び」の面白さを知り、そこから自己実現に向けてのエネルギーを駆動させ、将来の自己実現へと開花させることを目標にしています。保護者としても安心して通わせることのできる学校の1つです。

理系大学の附属校として人気が高いのは、芝浦工業大学柏です。第1回の志願者が1163名から1217名に増加しています。理系人材の育成が国にとって重要な施策でもありますので、ここ数年は理系大学の附属校の人気が高まっています。芝浦工大柏はそのメリットと最近では探究学習に力を入れ、総合型選抜の大学入試でも非常に成果を上げています。

他の千葉県の学校を少し紹介すると専修大学松戸は第1回が1466名から1427名、国府台女子は第1回が1060名から1039名、麗澤は第1回がAEコースで344名から434名、和洋国府台は第1回が703名から789名、光英VERITASが398名から320名となっています。ただし、必ずしも志願者の増減がそのまま難易度の変化と直接結びつくことはないですが、それでも志願者の増加している学校は難易度が高まっている可能性が高いので注意が必要です。

さて今回はまずは埼玉県や千葉県の入試状況を少し紹介させて頂きましたが、私学は学校ごとに個性があることが最大の特徴です。自宅からの通いやすさや模試の偏差値、大学進学実績などの指標は大事ではありますが、学校の教育方針、先生や生徒の様子、校風、施設などはそれ以上に重要な要素です。次年度以後に中学入試をお考えになっているご家族の皆様は、早めに各学校の説明会や学校行事にご参加するようお願いいたします。実際に学校に行くことでみえてくることが多々あると思います。

広野 雅明( ひろの・まさあき )

サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。