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【2024年東京都版】

注目のおすすめ私立共学校 3校

番外編も

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注目のおすすめ私立共学校 3校
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「偏差値だけではない学校選び」という言葉は昨今、塾でも言われるようになってきました。しかしながら、よく知らない学校は選べません。東京には約180校の私立中高一貫校があるので、調べるのも大変です。そこで、今回は、東京都にある偏差値50以下の私が注目しているおすすめの私立共学校を3校紹介します。

①順天(北区、王子駅から徒歩3分、四谷偏差値2/1男子46、女子47)

偏差値50以下、注目のおすすめ私立共学校3校、1校目は順天です。グローバル教育、理数探究に力を入れる190年の伝統校です。順天をひと言で言うと「人格形成と理数教育とグローバル教育に力を入れる伝統校」です。
 
順天は、1834年福田理軒という日本に筆算を広めた数学者が創立した順天堂塾がルーツで、理数教育に力を入れています。さらに、順天は文科省からSGH(スーパーグローバルハイスクール)に指定されている学校なので、グローバル教育にも力を入れています。
 
昨今の私立中はどこも「理数教育」「グローバル教育」「ICT教育」「探究」に力を入れていますが、順天はこの「理数教育」「グローバル教育」「ICT教育」「探究」に昔から力を入れてきたうえに、今後さらに進化するべく、2026年から学校法人北里研究所と法人合併することが決まっています。そんな順天の理数教育とグローバル教育について具体的に紹介していきましょう。

順天の理数教育

数学は、先生が作成するオリジナルプリントやパソコンに配信される問題や問題集を解いてから解説をしてもらって、ワークを使って個人で演習するというアウトプット重視の授業が特徴的です。理科は、創立者である福田理軒から名前をとった「理軒館」という教室、実験室、セミナー室などが入った地下1階、地上3階の建物が象徴的です。
 
理科の授業は社会と合わせて探究型の授業、つまり、先生が生徒に一方的に知識を与えるという昔ながらのスタイルではなくて、自分で課題を探して、自分で答えを探して、発表を通じて学んでいくというスタイルの学習です。
 
そのような探究型の授業って、昨今公立小学校でもやっているので珍しくないものの、順天では、コンサルティング会社のデロイトトーマツと連携して、起業家などから評価をしてもらう「探究コンテスト」や「英語プレゼンテーションコンテスト」などがあります。練習を重ねて本番のステージに立つという本格的なプレゼンの経験が得られるわけです。
 
2024年9月1日に中1は、事前研究をしたうえで、2泊3日で富士山に理科探究フィールドワーク旅行に行って、自然や生命と触れて学んだことなども発表までしています

順天のグローバル教育

順天は文科省からSGH(スーパーグローバルハイスクール)に指定されています。こちらが中学3年間での英検取得の目標です。

中1...英検4級
中2...英検3級
中3...英検準2級

この目標は8割以上の生徒が達成しています。しかも、英検準2級の取得率は中3で64%に達しているとのこと、これは順天くらいの偏差値の学校としてかなり高い取得率と言えます。
 
もちろん順天はSGH認定校なので、英検のための英語学習だけではなく、海外留学プログラムも充実しています。中3では希望制で、ニュージーランドに約3ヶ月の語学研修短期留学を実施、高1、高2では約1年間の留学を勧めていて、帰国後はそのままつぎの学年に進級できます。

順天の大学進学実績

順天の大学進学実績は毎年上がっています。2024年は順天の卒業生の53%が国公立、早慶上理、GMRCH、医師薬大に進学しました。

順天大学...四谷偏差値 2/1男子46、女子47、首都圏模試偏差値57
順天高校...Vもぎ偏差値60、理数選抜63
Vもぎ:進学研究会が主催する中学3年生を対象とした高校入試の模擬試験

このような順天の卒業生の53%が国公立、早慶上理、GMRCH、医師薬大に進学というのは、なかなかすごい結果だと思います。さらに、順天は2025年度から北里大学の指定校推薦枠が全学部、学科に拡大することが決まっています。

②成蹊(東京都武蔵野市、吉祥寺駅からバス5分、徒歩8分、四谷大塚偏差値男子50、女子55)

偏差値50以下、注目のおすすめ私立共学校3校、2校目は成蹊です。小・中・高・大学・大学院まで同じキャンパスにあります。成蹊をひと言で言うと「本物に触れる体験と国際理解教育に力を入れる伝統校」です。
 
成蹊を取り上げた理由は、「細分化された科目編成」「広過ぎる敷地と充実した施設」「進路指導と進路」にあります。それぞれ紹介していきます。

成蹊の細分化された科目編成

成蹊の国語、社会、数学、理科の授業は、分野別に細分化された科目編成になっています。たとえば、社会は地理、歴史、公民、理科は生物、地学、物理、化学といったように分野ごとに専門の先生が授業を受け持ちます。このように細分化された科目ごとに専門の先生がつくというのは、他校にはなかなか見られないスタイルで、「美術」もたとえば「書道」という独立した芸術科目として授業が行われています。
 
授業の各先生たちの説明は必要最小限で、グループワークとして調べたり、ディスカッションをしたり、発表したりする時間が多いので、自主性、創造性、他者との共創が育まれる機会が多そうです

成蹊の広大な敷地と充実した施設

首都圏中高一貫校の平均敷地面積は、27,700平方メートルのところ、成蹊の敷地面積は約270,000平方メートルという平均の約10倍の広さ、中1のまだ慣れないうちはキャンパス内で迷子になる生徒もいるそうです。

しかも、ただ広いだけではなく、武蔵野市の天然記念物、「新東京百景」にも指定されている欅並木を中心に、四季折々を彩る多種多様な自然、果物が実る木々もあって、それらが理科や家庭科の生きた教材にもなっています。
 
そして、成蹊は設備もトップクラスに充実しています。たとえば、成蹊の設備には、屋上に天文ドームがある理科館、明るい日差しが降り注ぐ約300席もある食堂、150種、1000個体以上を飼育する生物室、ラグビー公式戦が開催可能な人工芝グラウンドなどがあります。
 
中でも圧巻なのは、図書室で、書籍だけでなく雑誌や漫画も充実していて合わせて約16万冊もの蔵書があります。

成蹊の進路指導と進路

成蹊の進路指導は、個人の希望する進路に合わせた学習サポート、担任や教科担当による相談や学習面でのフォローのきめ細さに定評があります。また、成蹊卒業生の約3割は内部推薦を志望して成蹊大学に進学します。しかも、成績上位者は内部推薦の権利を保持しながら、他大学を受験できる併願制度があります。

③聖徳学園(武蔵野市、武蔵境駅から徒歩3分、四谷大塚偏差値、男子41、女子42)

偏差値50以下、注目のおすすめ私立共学校3校、3校目は聖徳学園です。聖徳学園をひと言で言うと「ICT教育、STEAM教育、グローバル教育に力を入れている伝統校」です。
 
そんな聖徳学園のICT教育、STEAM教育について紹介していきます。

聖徳学園の伝統

「聖徳学園」の「聖徳」という名前で浮かぶ名前と言ったら……そう、聖徳太子。「聖徳学園」は浄土真宗の僧侶が聖徳太子の「和」の精神をルーツに1927年に創設した学校です。
 
そんな伝統ある聖徳学園は2027年で100周年を迎えます。100周年を迎える学校は、新たな建物や新たなコースや新たなカリキュラムなど、大きな改革を行うものです。聖徳学園はどんな100周年を迎えるか注目です。

聖徳学園のICT教育、STEAM教育

ICT教育というのは、情報通信技術(ICT)を活用して、これまでの先生が黒板にチョークで字を書いて、生徒がそれをノートに写すというアナログな教育ではなく、電子黒板やプロジェクター、タブレットなどのデジタル機器や、アプリなどを使った学習支援ツールなどを活用した教育です。
 
STEAM教育というのは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)の5つの分野を統合的に学ぶ教育のことです。
 
聖徳学園は、ICT教育、STEAM教育という言葉がまだ今ほど使われていなかった10年以上前から、「STEAM教育」的といえる聖徳学園独自の教育を行っています。それは、聖徳学園が

Apple Distinguished School

というApple認定校であることにも現れています。Apple社は、教育にも携わっていて、そんなAppleの基準に満たした学校をApple認定校にしているのです。そして、iPadなどを最大限に活用できるように、教師やIT担当者にコーチングを行うApple認定の

Apple Professional Learning

という教育エキスパートが2人も在籍しているので、先生たちのITに関する知識、スキルも上がって、生徒の知識、ITスキルも上がります。聖徳学園では、全生徒ひとり1台のiPadとApple Pencilを授業で活用し、先生がスライドを配信して授業をしたり、生徒は先生と宿題のやりとりをしたりしています。
 
さらに、聖徳学園は入学してからのICT教育、STEAM教育だけではなく、入試からICTが始まっています。その入試とは「プログラミング」入試という名の実質「マインクラフト入試」。
 
マインクラフト、通称「マイクラ」は文科省もプログラミング教育・情報教育・協同学習などの教材として位置付けているくらい、多くのことを学べます。
 
ただし、マイクラを使ったプログラミング入試は、NintendoSwitchで遊ぶマイクラとは違い、パソコンを使ってコードを入力してギミックなどを作り上げていくプログラミング要素の高いマイクラです。それでもマイクラ好きには自分の好きなことの延長線上にある入試といえるでしょう。

聖徳学園のグローバル教育

聖徳学園は、グローバル教育も充実しています。中3生全員が参加するシンガポール、ニュージーランドでのホームステイ、高校生が全員参加する国際研修旅行では台湾とマルタを選択できます。希望者参加型の国際研修旅行では、アメリカ・フィリピン・ルワンダ・ベトナム・イギリスへのツアーがあります。
 
そしてさらに聖徳学園は多くの海外渡航先を用意している一方で、中1では農家民泊体験、中2で関西研修、伝統芸術鑑賞などの体験行事があります。「国際教育」というと、海外で学ぶことを連想しがちですが、同じくらい、自国のことを知ることも大事です。諸外国の人と交流すると、日本のことを紹介する機会も多いですからね。

④国学院大学久我山(東京都杉並区、久我山駅から徒歩12分、四谷大塚偏差値50)

さて、偏差値50以下、注目のおすすめ私立共学校3校を紹介しましたが、番外編としてもう1校、国学院大学久我山を少しだけ紹介します。
 
国学院大学久我山は、部活や委員会、文化祭、体育祭などの学校行事は男女一緒ですが、ホームルーム、授業は男子部、女子部それぞれの校舎に分かれる男女別学の学校です。
 
それでもあえて今回、国学院大学久我山を挙げたのは、国学院大学久我山は國學院大學の「不易流行」という建学の精神に基づいて、時代に流されない人間教育を行いつつ、時代に合わせていちはやく「BYOD(「Bring your own device」)」と言って、授業によっては生徒たちは自分のノートパソコンやタブレットを使って、調べながら問題を解き進めるという先進的な取り組みも取り入れている学校だからです。
 
「理数教育」「グローバル教育」「ICT教育」「探究」という昨今トレンドの教育だけでなく、これからの時代に必要な人間力を培える教育もしている学校を探している方で、通学圏内にある方は検討してみてはいかがでしょうか。
 
 
今回は、東京都にある偏差値50以下の私が注目しているおすすめの私立共学校を3校に加えた1校、合計4校を紹介しました。気になる学校があったら、学校説明会に参加して、ぜひご自身の目で、そしてお子さんの目で学校を見てもらえたらと思います。

学校訪問でどう感じたか「直感」を大切に

偏差値だけではない学校選びにおいて大事なのは、「なんかここはよさそう」「なんかここはピンとこない」という「直感」です。偏差値や進学実績は毎年変化しますが、その学校で受けた印象は変わりません。その学校に行ってどう感じたか、わが子はどう感じたか、その感覚を軸に選ぶと後悔しない学校選びができます。
 
学校に行くと、生徒の雰囲気、先生の雰囲気、生徒同士のコミュニケーションの雰囲気、先生と生徒、先生同士の雰囲気がわかります。校長の人柄も大事です。私立中は校長の人柄が学校のカラーに強く影響します。
 
また、生徒の心は学校施設や備品の扱いにも現れます。校内の生徒の作品の展示物や掲示物、机や椅子などの備品、廊下の壁や下足箱、トイレがどのように使われているかを見ることで、学ぶ場として良い環境かどうかを感じ取ることができます。
 
さらに、下校の時間にその学校から出てくる生徒たちの流れにあえて巻き込まれて、駅構内まで歩くと、日常の生徒たちの素の様子もわかります。このようなことは実際に足を運ばないとわからないことです。学校見学に行ったら、お子さんはどんな印象を抱いたか、お互いの感想を伝え合いましょう。お子さんに合う学校を見つけられることを応援しています!

西村創
受験指導専門家

早稲田アカデミー、駿台、河合塾Wingsなどで指導歴25年以上。
新卒入社の早稲田アカデミーでは、入社初年度に生徒授業満足度全講師中1位に輝く。
駿台ではシンガポール校講師を経て、当時初の20代校長として香港校校長を務め、過去最高の合格実績を出す。 河合塾Wingsでは講師、教室長、エリアマネージャーを務める。
現在はセミナー講演や書籍執筆、「にしむら先生 受験指導専門家」としてYouTube配信(チャンネル登録10万人超)などを中心に活動。
著書は『中学受験のはじめ方』(KADOKAWA)など多数。