私立高校の修学支援
東京都と大阪府で「授業料無償化制度」の導入始まる
2024.7
私立高校の修学支援
東京都と大阪府で「授業料無償化制度」の導入始まる
2024.7
今年度(2024年度)より東京都では所得制限が撤廃され、これにより国公私立を問わず高等学校の授業料は実質無償となります。大阪府でも段階的な無償化が始まり、2026年度には全学年で授業料が実質無償となります。
授業料の無償化は、土台には国が実施する「高等学校等就学支援金制度」があり、国の支援制度の不足分を各都道府県が上乗せする形の2階建構造で成り立っています。上乗せ分については都道府県ごとに支給額や所得制限など内容が異なります。
ここでは高等学校の修学支援について、国の「高等学校等就学支援金制度」と、全国で先駆けて無償化の導入を始めた東京都と大阪府の制度について説明していきます。
まずは国の「高等学校等就学支援金制度」についてみていきましょう。
教育の実質的な機会均等を目的として、授業料に充てる費用を修学支援金として負担し、家庭の経済的負担を軽減する制度です。国公私立は全ての高等学校の生徒を対象にしていますが、支給を受けるには所得要件等を満たす必要があります。
世帯の年収目安として910万円未満の世帯に年間11万8800円が支給され、さらに私立の高等学校に通う場合は年収590万円未満の世帯には加算があり、最大39万6000円が支給されます。
(参考)支援の対象になる世帯の年収目安 | |||
---|---|---|---|
子の人数 | 11万8,800円の支給 | 39万6,000円の支給 | |
両親のうち一方が働いている場合 | 子2人(高校生・高校生) 扶養控除対象者が2人の場合 |
〜約950万円 | 〜約640万円 |
子2人(大学生・高校生) 扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合 |
〜約960万円 | 〜約650万円 | |
両親共働きの場合 | 子2人(高校生・中学生以下) 扶養控除対象者が1人の場合 |
〜約1,030万円 | 〜約660万円 |
子2人(高校生・高校生) 扶養控除対象者が2人の場合 |
〜約1,070万円 | 〜約720万円 | |
子2人(大学生・高校生) 扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合 |
〜約1,090万円 | 〜約740万円 |
注)文部科学省「私立高校授業料実質無償化リーフレット」から転載
また制度を受けるにあたっては以下の内容に注意が必要です
国による修学支援金により公立の高等学校は授業料が実質無償となります。しかし私立の高等学校では、所得要件を満たしていない場合や、授業料が支給額より高い場合などは差額を負担する必要があります。
各都道府県では、この差額分を独自の制度を設けて、全額または一部を支援しています。制度の内容は都道府県ごとに所得要件や支給額が異なり、低所得層や多子世帯に支援の重点をおくなど地域の事情を反映した内容となっています。特に私立の高等学校が多く、かつ授業料が平均より高めの大都市圏では、いち早く無償化を導入した東京都や大阪府をはじめ厚めの支援内容となっています。
東京都では、国の支援に上乗せする形で最大48万4,000円が支援されます。2024年度からは、910万円未満の世帯を対象としていた所得制限が撤廃され、東京都在住の生徒は、都外の高等学校に進学した場合も含め、一律に支援を受けられるようになりました。
授業料が48万4,000円未満の場合は実際の授業料が支援額となります。また授業料が48万4,000円を超える場合は差額の負担が必要になります。
上限額は都内私立高等学校の授業料の平均額489,343円(令和5年)を基に決められています。授業料が上限額を下まわる高等学校は全体の約7割(国際系のコースや、芸術系などの専門学科を除いた場合)で、これらの高等学校では授業料の負担はなくなります。一方で約3割の高等学校では一部負担が必要になりますが、多くの部分を支援額で補うことができます。
注)公益財団法人東京都私学財団「【全日制・定時制向け】保護者負担軽減リーフレット」から転載
大阪府では、国の支援に上乗せする形で年収・子どもの人数に関係なく全額が支援されます。なお新制度は2024年度の高校3年生から段階的に適応され、全学年で適応される2026年度までは一部負担額が生じる場合があります。
これから高等学校に進学する中学生は、2024年度時点の学年が3年生なら高校1年生は現行制度(下記①)が適応され、新制度(下記②)が利用できるのは高校2年生からになります。中学1・2年生は高校入学時から新制度(下記①)を利用することができます。
また大阪府の場合は高等学校の指定があります。全日制の高等学校では府内94校、府外11校(2024年4月現在)が指定校となっています。
授業料 | 世帯の子どもの人数 | 年収(めやす)別の保護者負担額 | |||
---|---|---|---|---|---|
590万円未満 | 590〜800万円 | 800〜910万円 | 910万円以上 | ||
63万円 まで |
全世帯 (世帯の子どもの人数に関係なし) |
無償 | |||
63万円 を超える分 |
全世帯 (世帯の子どもの人数に関係なし) |
無償 ※大阪府外の対象校は保護者が負担 |
保護者が負担 |
授業料 | 世帯の子どもの人数 | 年収(めやす)別の保護者負担額 | |||
---|---|---|---|---|---|
590万円未満 | 590〜800万円 | 800〜910万円 | 910万円以上 | ||
63万円 まで |
全世帯 (世帯の子どもの人数に関係なし) |
無償 | |||
63万円 を超える分 |
全世帯 (世帯の子どもの人数に関係なし) |
無償 |
注)大阪府「令和6年度以降に段階実施する授業料支援制度について」から転載
モデル世帯※1の年収めやす | 課税標準額×6% 一 区市町村民税の調整控除額※2 |
授業料負担年額 | ||
---|---|---|---|---|
こども一人の世帯 | こども二人の世帯※3 | こども三人以上の世帯※3 | ||
590万円未満 | 154,500円未満 | 無償 | 無償 | |
800万円未満 | 251,100円未満 | 20万円※4 | 10万円※4 | |
910万円未満 | 304,200円未満 | 481,200円※5※6 | 30万円※5 | 10万円※5 |
注)大阪府「令和元(平成31)年度以降に高校等へ入学する方への授業料支援制度について」から転載
東京都 | 大阪府 | |
---|---|---|
支援額(上限額) | 上限484,000円 | 全額 ※2026年度までは一部負担額が生じる場合がある |
無償化の開始時期 | 2024年度 | 2024年度から段階的に導入 全学年の無償化は2026年度から |
対象校 | 都外の高等学校も含む | 高校の指定あり(府内94校/府外11校) (全日制2024年4月現在) |
さまざまな修学支援制度は、教育の機会均等をひとつの目的に設計されていますが、教育問題に限らず、少子化への対策など社会的な問題解決の手段としての役割も内包しています。少子化の原因の一つが家計における教育費負担の大きさであることを考えれば、授業料の無償化は今後さらに拡大していくことが予想されます。
これから高校進学を迎える家庭では、住んでいる地域の制度はどうなっているのか、変更される予定はあるのか、制度の内容を早めに調べておくことをお勧めします。都道府県によって内容の違いはあるものの家計負担は大きく軽減されます。支援内容を詳しく調べてマネープランを見直してみませんか、学費が高そうだから私立の高校は諦めていたという家庭でも、進路の選択肢を広げることができるかもしれません。