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私立高校の修学支援

東京都と大阪府で「授業料無償化制度」の導入始まる

今年度(2024年度)より東京都では所得制限が撤廃され、これにより国公私立を問わず高等学校の授業料は実質無償となります。大阪府でも段階的な無償化が始まり、2026年度には全学年で授業料が実質無償となります。

授業料の無償化は、土台には国が実施する「高等学校等就学支援金制度」があり、国の支援制度の不足分を各都道府県が上乗せする形の2階建構造で成り立っています。上乗せ分については都道府県ごとに支給額や所得制限など内容が異なります。

ここでは高等学校の修学支援について、国の「高等学校等就学支援金制度」と、全国で先駆けて無償化の導入を始めた東京都と大阪府の制度について説明していきます。

国の支援制度の概要

まずは国の「高等学校等就学支援金制度」についてみていきましょう。

教育の実質的な機会均等を目的として、授業料に充てる費用を修学支援金として負担し、家庭の経済的負担を軽減する制度です。国公私立は全ての高等学校の生徒を対象にしていますが、支給を受けるには所得要件等を満たす必要があります。

世帯の年収目安として910万円未満の世帯に年間11万8800円が支給され、さらに私立の高等学校に通う場合は年収590万円未満の世帯には加算があり、最大39万6000円が支給されます。

支給額のイメージ
  • 私立高校(通信制)は29万7,000円
    国公立の高等専門学校(1〜3年)は23万4,600円が支給上限額
  • 両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安(家族構成別の年収目安は裏面下表参照)
(参考)支援の対象になる世帯の年収目安
子の人数 11万8,800円の支給 39万6,000円の支給
両親のうち一方が働いている場合 子2人(高校生・高校生)
扶養控除対象者が2人の場合
〜約950万円 〜約640万円
子2人(大学生・高校生)
扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合
〜約960万円 〜約650万円
両親共働きの場合 子2人(高校生・中学生以下)
扶養控除対象者が1人の場合
〜約1,030万円 〜約660万円
子2人(高校生・高校生)
扶養控除対象者が2人の場合
〜約1,070万円 〜約720万円
子2人(大学生・高校生)
扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合
〜約1,090万円 〜約740万円

注)文部科学省「私立高校授業料実質無償化リーフレット」から転載

また制度を受けるにあたっては以下の内容に注意が必要です

  • 支給には申請が必要で、申請は入学時の4月に必要な書類を高等学校に提出します。
  • 支給は原則高等学校に対して行われ授業料に充てられます。生徒本人や保護者が受け取ることはできません
  • 支援の対象は授業料で、その他の入学金や教材費、修学旅行費などは対象となりません。

都道府県による追加支援

国による修学支援金により公立の高等学校は授業料が実質無償となります。しかし私立の高等学校では、所得要件を満たしていない場合や、授業料が支給額より高い場合などは差額を負担する必要があります。

各都道府県では、この差額分を独自の制度を設けて、全額または一部を支援しています。制度の内容は都道府県ごとに所得要件や支給額が異なり、低所得層や多子世帯に支援の重点をおくなど地域の事情を反映した内容となっています。特に私立の高等学校が多く、かつ授業料が平均より高めの大都市圏では、いち早く無償化を導入した東京都や大阪府をはじめ厚めの支援内容となっています。

東京都の助成制度は上限あり(私立高等学校等授業料軽減助成金事業)

東京都では、国の支援に上乗せする形で最大48万4,000円が支援されます。2024年度からは、910万円未満の世帯を対象としていた所得制限が撤廃され、東京都在住の生徒は、都外の高等学校に進学した場合も含め、一律に支援を受けられるようになりました。

授業料が48万4,000円未満の場合は実際の授業料が支援額となります。また授業料が48万4,000円を超える場合は差額の負担が必要になります。

上限額は都内私立高等学校の授業料の平均額489,343円(令和5年)を基に決められています。授業料が上限額を下まわる高等学校は全体の約7割(国際系のコースや、芸術系などの専門学科を除いた場合)で、これらの高等学校では授業料の負担はなくなります。一方で約3割の高等学校では一部負担が必要になりますが、多くの部分を支援額で補うことができます。

東京都の助成制度
  • 授業料の負担軽減額は、484,000円の範囲内で、在学校の授業料額(保護者が負担した金額)が上限です。
  • 年収目安は、保護者1人にのみ給与収入がある4人世帯(夫婦と子2人)及び保護者2人に給与収入がある5人世帯(夫婦と子3人)をモデルとした場合です。
    年収は目安であり、区市町村民税課税標準額等に基づき審査を行います。

注)公益財団法人東京都私学財団「【全日制・定時制向け】保護者負担軽減リーフレット」から転載

大阪府の助成制度は全額支援(私立高等学校等授業料支援補助金)

大阪府では、国の支援に上乗せする形で年収・子どもの人数に関係なく全額が支援されます。なお新制度は2024年度の高校3年生から段階的に適応され、全学年で適応される2026年度までは一部負担額が生じる場合があります。

これから高等学校に進学する中学生は、2024年度時点の学年が3年生なら高校1年生は現行制度(下記①)が適応され、新制度(下記②)が利用できるのは高校2年生からになります。中学1・2年生は高校入学時から新制度(下記①)を利用することができます。

また大阪府の場合は高等学校の指定があります。全日制の高等学校では府内94校、府外11校(2024年4月現在)が指定校となっています。

■新制度

①令和6年度の3年生、令和7年度の2・3年生
授業料 世帯の子どもの人数 年収(めやす)別の保護者負担額
590万円未満 590〜800万円 800〜910万円 910万円以上
63万円
まで
全世帯
(世帯の子どもの人数に関係なし)
無償
63万円
を超える分
全世帯
(世帯の子どもの人数に関係なし)
無償
※大阪府外の対象校は保護者が負担
保護者が負担
  • 【大阪府内の対象校】63万円を超える授業料については、年収めやす800万円未満の世帯については学校が負担し、年収めやす800万円以上の世帯については保護者等が負担します。
  • 【大阪府外の対象校】63万円を超える授業料については、世帯の所得によらず保護者等が負担します。
②令和8年度以降
授業料 世帯の子どもの人数 年収(めやす)別の保護者負担額
590万円未満 590〜800万円 800〜910万円 910万円以上
63万円
まで
全世帯
(世帯の子どもの人数に関係なし)
無償
63万円
を超える分
全世帯
(世帯の子どもの人数に関係なし)
無償
  • 世帯の所得に関係なく保護者等が負担する授業料は0円になります。

注)大阪府「令和6年度以降に段階実施する授業料支援制度について」から転載

■現行制度

③2024年度の1・2年生・2025年度の1年生) ※大阪府内対象校のみ
【年間授業料が60万円の全日制高校の場合】
モデル世帯※1の年収めやす 課税標準額×6%
一 区市町村民税の調整控除額※2
授業料負担年額
こども一人の世帯 こども二人の世帯※3 こども三人以上の世帯※3
590万円未満 154,500円未満 無償 無償
800万円未満 251,100円未満 20万円※4 10万円※4
910万円未満 304,200円未満 481,200円※5※6 30万円※5 10万円※5
  • 保護者のうちどちらか一方が働き、子ども2人(16歳以上19歳未満1人、16歳未満1人)がいる4人世帯
  • 保護者全員の「課税標準額×6% 一 市町村民税の調整控除の額(政令指定都市の場合は調整控除の額に4分の3を掛けて計算)」の合算
    なお、早生まれにより扶養控除の適用が同学年の遅生まれの生徒等よりも1年遅くなる者の場合は、保護者のうちどちらか一方は「(課税標準額 一 33万円)×6% 一 市町村民税の調整控除の額」で計算します。
  • 生徒本人を含んで2人以上の子ども扶養する世帯については、手厚い支援を受けることができます。詳しくは後述の多子世帯についてをご確認ください。
  • 授業料にかかわらず、負担額は変わりません。
  • 授業料が60万円を超える学校の場合、その超えた額と表中の金額の合計が保護者負担額となります。
    (授業料が65万円の場合:表中の金額+5万円が保護者負担額となります。)
  • 授業料が60万円未満の場合、授業料から就学支援金(118,800円)を引いた額が保護者負担額となります。

注)大阪府「令和元(平成31)年度以降に高校等へ入学する方への授業料支援制度について」から転載

●東京都と大阪府の授業料無償化制度の比較

東京都 大阪府
支援額(上限額) 上限484,000円 全額
※2026年度までは一部負担額が生じる場合がある
無償化の開始時期 2024年度 2024年度から段階的に導入
全学年の無償化は2026年度から
対象校 都外の高等学校も含む 高校の指定あり(府内94校/府外11校)
(全日制2024年4月現在)

高等学校の授業料無償化の流れは?

さまざまな修学支援制度は、教育の機会均等をひとつの目的に設計されていますが、教育問題に限らず、少子化への対策など社会的な問題解決の手段としての役割も内包しています。少子化の原因の一つが家計における教育費負担の大きさであることを考えれば、授業料の無償化は今後さらに拡大していくことが予想されます。

これから高校進学を迎える家庭では、住んでいる地域の制度はどうなっているのか、変更される予定はあるのか、制度の内容を早めに調べておくことをお勧めします。都道府県によって内容の違いはあるものの家計負担は大きく軽減されます。支援内容を詳しく調べてマネープランを見直してみませんか、学費が高そうだから私立の高校は諦めていたという家庭でも、進路の選択肢を広げることができるかもしれません。

【参照資料】